古代インドのコーサラ国の都アヨーディヤのダシャラタ王には3人の王妃と4人の王子がいた。ラーマは第1王子として生まれたが、実は魔王ラーヴァナを滅ぼし、この世を平和に導くために天より降りたヴィシュヌ神の化身であった。

 ラーマは別の王妃の嫉妬により王宮を追放され、シータ姫、弟ラクシュマンと14年間にわたり森で放浪する。ある日森に潜む羅刹女を追い払ったことにより、ランカに住む魔王ラーヴァナの怒りをかい、シータ姫を誘拐される。

 鳥王ジャタユによりそれを知ったラーマは、猿王スグリーヴァ、その部下ハヌマーンたちの助けをかりて海の上に橋を築き、ランカ城に攻めこむ。ハヌマーンは自由に大空を飛行し、自在に体を伸縮して大活躍。

 しかし、ラーヴァナの軍勢と戦闘中、ラクシュマンは瀕死の重傷を負う。このときハヌマーンは天駆けてヒマラヤに飛び、薬草が生えた山を、山ごと担いで運び、ラクシュマンの命を救う。両軍激戦の末、ラーマは「神の武器」を使って10の頭と20の腕をもつラーヴァナに戦いを挑む……。

●ヒンドゥー教は、この世は創造・維持・破壊の無限の繰り返しであると言う。 創造の神はブラフマン、維持の神はヴィシュヌ、破壊の神はシヴァ。 ヴィシュヌは地球の危機には、救済のために化身としてこの世に顕れる。 「ラーマーヤナ」の主人公ラーマは ヴィシュヌの化身である。

●「ラーマーヤナ」とは 「マハーバーラタ」と並ぶ古代インドの二大叙事詩のひとつである。サンスクリット語で書かれ、紀元前4-5世紀には成立したといわれる。この作品は、詩人ヴァールミーキが編纂したものを原作としている。

●この物語は、インドのみならず、東南アジアにも広範に伝えられ、アンコールワットやタイの舞踊、インドネシアの影絵芝居など絵画、彫刻、建築、音楽、舞踏、演劇、映画のテーマとなっている。中国では「西遊記」に形を変え、日本にも平安時代に漢訳仏典により伝えられた。桃太郎もこの物語が元になっているという説もある。